タルトの弁解



なるほど彼女はタルトを好んで食べます。

しかしそれが彼女の夢見るような瞳の輝きを少しでも説明してくれるでしょうか?
ところが浅薄なカレはこう考えました。

「メローチンキ嬢の指にはいつだってこんがりと焼けた小麦粉のかたまりが付着している。すてきにヒョロリと奥びかりする彼女の十の指と、タルトの粉、これはいいアヴェックだ。
お日様の昇る時間にも、お月様の昇る刻にだって、彼女の指先には十六種類あるうちのタルトどれかひとつが抓まれているんだ。そして、そんな性癖を弁解するかのように、両の瞳は、高価な海産物のしかたで潤い光り輝いている…。よし!ボクくらいは彼女を許すんだ!」

カレはそう呟くと、すぐさま街の中心部にあるブリ・エ・ミコラータ目指して駆け出しました。
ひとつの影が、街路樹たちのそわそわと始まる伝言ゲームの中、わき目も振らずもてる力いっぱいで駈け抜けていくのです。

その頃、街に唯一の洋菓子屋さんでは、十七種類目のタルトが出来上がろうとしています。
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by huck-a-gelmondo | 2004-11-01 13:02