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ヴィオロンの夜③

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次に出演となった老紳士はJJを彷彿とさせる風貌であった。
ピンクのTシャツは色あせ、吊りズボンがお洒落だ。靴は張伯端のように軽やか。

ガタガタ揺れるテーブルを前に口上があり、ゆっくりとポツポツ話しはじめる。
果たして下ネタであった。
アコースティックギターとジャンベと鳴り小物の三人組が参加してくる。
JJ似の老人はピョコピョコ踊る。
ギターは陰鬱な四小節を繰り返す。
ジャンベのリズムは目の前で落ちる。

老人はステージを後にし、バックバンドだけが残りスピリチュアルななにかがはじまる。
アフリカかどこかにある地層の学術名が彼らのバンド名であった。

監督は、スピリチュアルなものをスピリチュアルな風にやられると辛かった。
安い光惚感をわざわざ見せつけられると、精神がデッドボールを食らったように弱った。
スピリチュアルを語りたいなら、なるべく具体的で触り易いところからはじめるべきだ。
18世紀の椅子や濡れた電柱、葡萄の一房…
彼らはスピリチュアル的というひとつのジャンルを選んだだけであったろう。

監督は向かいの定食屋へ逃げ、瓶ビールの精神性と向き合った。
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by huck-a-gelmondo | 2009-09-22 09:07

ヴィオロンの夜②

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1.君は脱いだらエンタシス(仮)
2.日暮里ハムスターズ公式応援歌
3.ポロンのうた
4.小さな喫茶店
5.つま先だちでキッスがしたい

監督の打席(20分)は、ギリシャの唄から始まった。
曲名はまだ仮だ。
ギリシャを覆う乳白色の倦怠を見事にとらえた名品である。
反応はそこそこだった。
そして通称「ハムのうた」が続く。
草野球の悲哀とやるせなさ、不条理や喝采を一曲中へ見事に閉じ込めた名品である。
反応はやはりそこそこだった。
「ハモハモ」の次はハーモニカを装着してポロンのうた。
ちかいママやナチ不在の中、一人でなんとか可愛く美味しそうにうたいきったはずである。
ポロンとはお菓子の謂だが、正式名称もじつは「ポロン菓子」という。
ちいさなお子さまでも安心してお召し上がりいただけます。
反応はまあまあだ。
メトロノームをアップライトピアノのあたまに置いて、部屋中にカチカチ鳴らしながら小さな喫茶店をうたう。
ヴィオロンで歌いたかっただけである。
きけばこの曲、今日のタンゴバンドもレパートリーにしているという。
反応はまあまあの域をでることはなかった。
最後は、科学と月と想像力の唄。
コンスタンティン・ツィオルコフスキーというロシアの科学者が唱えた理論を、ボウヤとおじちゃんの見事な対話へと封じ込めた名品であった。
つま先だちをすれば届きそうな、路地裏の月であったからだ。
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by huck-a-gelmondo | 2009-09-20 20:48

ヴィオロンの夜①

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この日はよい月夜。
阿佐ヶ谷駅のプラットフォームへ降りると、例の武蔵野の夕陽がぶるぶる煮えたぎりながら落ちていくところだった。

ラピュタ阿佐ヶ谷を冷やかしてからヴィオロンに続く露地を進めば、中央線があの娘の胸に突きささる音がする。

振り返ると、満願のお月さんが感傷をあざ笑うようにでっぷりと昇りかけだったわけだ。

舞台装置みたいに大げさな、ひらベッタイ昇りかけの月だった。

監督のベースボールキャップはサフラン色に染まった。

ヴィオロンは中華定食屋と和菓子屋が民家を隔てて並ぶ露地にあり、隣にはスパイスの匂いがしないタイ料理屋。

その裏通りには銭湯がラーメン屋と向き合って煙を吐いている。

ああどこまでも庶民派!阿佐ヶ谷よ。
並木通りの麗しき阿佐ヶ谷よ。
小路を入れば、屋根から屋根への怪盗紳士!阿佐ヶ谷よ。

日没とともに、小さな喫茶店は小さな音楽発表会へと変わる。

今夜のヴィオロン出演者はタンゴバンドと独り芸のおじいちゃん、そしてスピリチュアルなアコースティックトリオ、ピアノとバイオリンのデュオ、加えて高萩裕司であった。
総勢五組、秋を前に豊穣の音楽祭である。

今回誘ってくれた進藤くんは主催のタンゴバンド「オゥルドガァド」のピアノ弾き、最後に出演の小柄な巨人であった。

まずバイオリンとピアノの清楚な女性お二人が、さまざまのクラシカルな旋律で場内を満たす。

「情熱大陸のテーマ」も演奏されたが、これは愛嬌。
監督は出番を次に控えていた。
いわばネクストバッターズサークルで立て膝をついているような格好であった。

ヴィオロンの弦たちとピアノのハンマーたちが科をつくりながら痙攣していく。
文句ナシのプロローグであった。
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by huck-a-gelmondo | 2009-09-20 00:20

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夏は過ぎ、水撒きの必要もありません。
やってきた季節の風はさみしいほどに乾いているが、不思議とココロは潤うものです。

本日、9月6日は名曲喫茶阿佐ヶ谷ヴィオロンで小さなリサイタルがあります。

3、4年ほど前に新宿の名曲喫茶らんぶるで仲良しになった、進藤くんが誘ってくれました。
進藤くんはアイリッシュバンドで登場するでしょう。
わたしは独りで演奏するでしょう。
ここでは全員、電気仕掛けいっさいナシの演奏です。

先日は、双葉双一さんのソロリサイタルが阿佐ヶ谷ヴィオロンで開催されましたが、マスター曰く「かつてイタリアからカンツォーネ歌手が来日したとき以来の盛況です」とのことでした。
実際、70人をこえる集まりで、立ち見の方もたくさん居ました。

今日はそんなことにはならないでしょう。
だってカンツォーネの歌いかたなんて知らないからです。

ここでは店内にあるものすべて魔法がかかったようです。
壁にかかった古い絵は、中野に傾いていた名曲喫茶クラシックに飾られていたもので、クラシック閉店に際して(それは何年前のことだっただろう!)マスターが引き取ったものだそうです。

開場は19時くらいからだと思います。
ワンジュース付きで、一律1000円。


阿佐ヶ谷ヴィオロン
→03-3336-6414
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by huck-a-gelmondo | 2009-09-06 02:34