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備忘録

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幸せと不幸せのあいだで糸を垂らしていたら、半魚人が釣れました。

太陽は高く、階段は長い。

日暮里ハムスターズは、夏のティーシャツ焼けを呪います。
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by huck-a-gelmondo | 2012-07-17 23:06

備忘録

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神宮球場へヤクルト中日戦を見に行った。
ヤクルトの圧勝だった。
席を占めたバックスクリーン付近から見えるマウンドとバッターボックスが絶妙に近くて遠いと思った。
ナイターのあからさまな照射が、遠近法を狂わせているか。

スタンドの何列か前方に、おじさまがおひとりさまで観戦している。
事務職風のワイシャツ×スラックスに、ドラゴンズのユニフォームを羽織っていた。一見してベテランだとわかった。
九回表の中日最後の攻撃、続く凡打であっけなくツーアウトになると、彼はしずかにユニフォームを脱ぎはじめ、畳んでビジネスバッグにしまい終わると同時にゲームセット。
ベテランの見極めは、コンマ一秒のズレも許さないらしかった。

別のお一人さま、CとDが重なったドラゴンズキャップを被った、やっぱりサラリーマン風「五時から男」は、試合終了を確認してからゆっくり脱帽した。
そっとキャップを二つ折りにし、手提げのビジネスバッグにしまう。
まるで商談後、やにわに打ち解けた話題を振りながら書類をしまうときのように自然な所作だと思った。

彼らがバッグのファスナーを閉め、スックと立ち上がった瞬間とは、熱狂的野球ファンが一般人に戻る瞬間に違いなかった。
こうして野球帽を引き算してみれば、どこからどう見ても新宿駅ですれ違うおとうさん方と見分けが付かなくなっている。
そんな、野球と日常生活を区切る狭間を目撃してドキッとした。
狭間を知らせるサインはささやかでありながら、その境目にはゾッとするような深淵が横たわっている。
彼らは懐に匕首をしのばせるように、バッグの中へ野球帽やユニフォームを隠し持ち、一般人の顔をして銀座線に揺られていく。
背中に目玉をまわしながらアジトへ帰巣するアナーキストのようだと思った。
彼らにくらべたら、ギターケースやDJバッグを背負い歩く音楽好きなんて、なんと退屈で魅力のない人種だろう。

今朝方、あなたの隣に座ったビジネスマンの革鞄にも、ベースボールキャップが隠されていたのかも知れない。
盛夏を前にした、怪談です。
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by huck-a-gelmondo | 2012-07-09 18:30