キャメルのコート

秋色の街道を一人のロンドン帰りが歩いています。
左手にはフィルターぎりぎりまでチビになったタバコを指先につまみ、右手にはカサカサになった革鞄をぶら下げ影を引きずりずり歩いています。
彼は待ちに待った季節を祝福するため慣れないタバコに火を点し、むせ返る喉でのみ秋を受け入れることができるのです。
影は昨日よりも長く伸び、自身のやり方でその満足をあらわしているように見えます。
革鞄の中には箱型の無愛想な機械が納めてあり、それは彼が最も大切にする「エフェクター」と呼ばれる種類の道具でした。

長く季節の訪れるのを待ち、街にエフェクトをかけにやってきたのです。

石畳はすでに途切れ、道は一歩ごとサクッサクッと軽い音のする小高い丘の頂まで届いていました。
街を広く見渡せることを確認すると、彼は赤くむき出しの土の上へ腰を下ろし、鞄を右手からひざの上へ、機械を鞄の中からひざの上へ移し、その左端に出っ張ったツマミを時計回りにソロソロとまわし始めました。
機械はだんだんと熱を発し出したようです。
耳を澄まし、その他に三つあるツマミを同じく慎重に調整し、また耳を澄まし・・・そんな彼の背後では、影も背中を丸めて指先でツマミをいじっているようでした。
そのうちにアクビ色の太陽も家々の屋根に隠れ、再び山々の間から昇り、各家庭のカレンダーが一日分めくらはじめました。
彼はただじっと、指先だけを繊細に動かし、時折耳の先が多少プルプルと震えるほかは、一晩中ピクリともしておらず、街の人々が労働のため、登校のため、泥棒のため、それぞれの理由で街道にあふれ出ると、はじめてホッと脱力したように安堵の息を大きく吐き、ドデッと大の字に寝転んだとたん、スヤスヤと寝息をたててしまいました。
街道は一色に塗りたくられていました。
男も、女も、子供も、大人も、老人も、スリも議員も、皆全員がキャメルのコートを秋風にヒラヒラさせていたのです。
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# by huck-a-gelmondo | 2004-11-13 12:08

11月18日(木) open 19:00 start 20:00
渋谷 青い部屋 『ミュージックサロン』
w/ 野村麻紀  廣島屋(紙芝居)、The Sharmans、ボスチーズ  
前売り・当日 ¥2500(1D含)

紋切り刀を懐に、無意識裡のアシッドをギターケースに忍ばせた京都からの刺客、野村麻紀を迎えての、個人的にはサイキックフォークロアⅡの趣。 


11月23日(祝) open 18:30 start 19:00
青山 月見ル君想フ  『空南』       
w/ Itach  JPC BAND(with 来門 from SMOGAS)  etc…(ゲストあり)
*ソロではなくHappy Dispatch(from湯川音楽研究所)として
前売り ¥2000(+1D)  当日 ¥2500(+1D)

真性ロックバンドHappy Dispachとして出演。このバンド、まずフロントマンがかっこいい。長身、細身、ボサボサ頭の三拍子そろったロックヤング、加えてその不可解な腰の動きが悲しくも官能的ですらあります。ベース嬢も近年まれに見るライオットガールで、ステージ上での静かな破天荒はアンプを伝わり低音となり、「ブリブリ」と鳴り渡るってな寸法です。とくればドラムも黙っちゃいない、プリミティヴ太鼓で鍛えた瞬発力は、たとい過剰にでかいフロントマンにその姿隠されようとも、タイトにルーズに一聴バラバラなバンドの音を支えます。そしてボク、ライブを見た友人の一言「キミはハッピーディスパッチの『パッチ』役だね」とは云い得て妙、ロックンロールバンドが当然の働きで「ロール」するのを阻止する役目、といったら誤解もありましょうが、皆さん、スケールはおろかコードすらひとつも知らなかったアート・リンゼイ卿のギクシャクが、フリージャズからボサノヴァまでをも解体、ではなくその様式を拒否していった顛末を思い起こしていただき、あとはライブを見ていただくことにしましょう。なお、一月には彼の地ニューヨークはCBGBでのライブも予定しております。


12月2日(木) open 19:00 start 20:00
北青山 66modern
w/ ヨウスケyoung etc・・・
前売り・当日 ¥1000
66modernの営業も今年いっぱいとのこと、『一人ハイテンション大会』ヨウスケyoung(Happy Dispatchのギターボーカル氏)を迎えての66modern最後の夜、「ところで青山も変わっちまったなあ」とのこと。
 

12月12日(日)  open 18:00 start 18:30
新宿 JAM  『青黄赤 vol.1』
w/ ハナリキョウコとザ・スナイパーズ サロメの唇 ドルフィンズエコー etc・・・
前売り ¥1700  当日 ¥2000

悲しいまでに純然たる懐古主義、かどうかは見たこともないのでわかりません。が、新宿JAMサイド曰く、「昭和歌謡な夜」とのこと。そのオープニングを任されました。

       予約は camagro-169@docomo.ne.jp マデ
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# by huck-a-gelmondo | 2004-11-13 11:27

A「いま大流行中のスペイン風邪は、いつものあの三丁目からはじまったそうだ」 
B「まったく。そろそろ対策をうって出てもいいものだがね」 
A「まずね、実際的データとして三丁目には姿見が多すぎるというのがあるんだ。一丁目と二丁目、それに五丁目にある限りの鏡を寄せ集めても、三丁目の数字にはとても歯が立たないそうだ。最近発表された、まずもって信用に足るデータだがね」 
B「あっ!」
A「エッ!」
B「やっぱり。イワン・コッチャナイ博士の論文の話か…道理で!」
A「…」 
B「キミも懲りない男だな!」
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# by huck-a-gelmondo | 2004-11-09 22:59

椿

ガマグチの財布を取り出そうと内ポケットをさぐると、一葉の柔らかい湿り気が指先にあたった。
掌の半分ほどもある大判の椿の花びらであった。
「やられた!!」と言葉がクチをつく間もなく、向こう三十メートルほど先の四辻にスリの三十郎がこっちを見ていた。
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# by huck-a-gelmondo | 2004-11-09 15:58

ポプラの二階

背骨で大きく息を吸い込むように、伸びをしました。
伸びに伴うはたらきでカカトをグッとあげると、宙吊りになった革靴のヒールが重力に従うかたちでスルスルと伸び、ついには地面に着きました。
と同時に背がグンッと高くなり、いつしかヒールは屋根を越えて成長していたのです。
地から生える二本の細いボウは絡まりもつれ、彼女の上半身もコマのように旋回しながら幹を導くように昇り続け、あっという間、ポプラの木になりました。
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# by huck-a-gelmondo | 2004-11-04 22:09

ポルカはひょんなことから隔週日曜日に村の老若を集めて開催される草野球に参加する運びとなった。教会裏でプレイボールするこの試合、毎週ではなく隔週の開催となっているのは、昆虫のように老い果てた教会の神父への気遣いであり、また昆虫への同情であり、「日曜日の金属音は鐘の音でじゅうぶんだ」という鉄鋼工場勤務作業員への金属バット的見地からの配慮であるのだが、最も重要なワケがその裏に隠れている。つまり隔週であれば、神父(これが相当の堅物である)から「ヤカマシイ!」との注意を受けたところで翌週は休んで反省の色を見せておき、そのまた翌週は再び何食わぬ顔でヤアヤア!と球をほおって、撃つ、走る、守る。要は懲りずにまた草野球をする。そしてまた注意を受ける、翌週休む、また投げる、撃つ、走る。注意を受ける。翌週休む………と、神父の激しい物忘れ(これが相当の進行である)が完治しない限りにおいてエターナルループが完成し、理屈上では村民は永遠に、年に二四回の草野球を楽しめるという仕掛けになっているのである。

ポルカは二週間分の昼食を我慢して、村のチームのベースボールキャップを買うことに決めた。受注生産であるため、さらに二週間待った。そのキャップは、限りなく紫に近い紺地へ村の頭文字であるエスのアルファベットが黄色の糸で縫い付けられた、スタンダードなベースボールキャップであった。常日頃、特に昼食の必要性を感じていなかった彼は、これならカーボン製の金属バットだって遠い夢ではないぞ、とキャップのツバをチョコンとはじいた。

帽子をかむり始めた彼は、帽子をかむり続けた。
一日中、どんなときでも帽子をとることはなかった。少なくとも、人目につくところでは。

ポルカの隣に住むサテローナ夫人は、そんな彼をいぶかしげに見守り、怪しんだ。彼女の深緑色の好奇心は、彼女自身に有閑婦人を許さなかった。
必ずや帽子の縁と頭頂部の接する部分にカラクリがあるに違いないと考え、それからというもの、入浴後の習慣としてニ十年間続けてきたクロスワードパズルをパタリと止め、毎晩毎晩そのカラクリの解明に想像を逞しくした。

ポルカは、特に帽子が似合っているからと自惚れるほどナルシスな訳ではなく、また念願のベースボールキャップが手に入ったと浮かれはしゃぐほど無邪気でもなかった。彼は帽子に違和感をすら感じていたのである。しかし彼はかむるのを止めなかった。

ポルカと帽子に関する妙な噂話も止まなかった。そのほとんどはサテローナ夫人が毎晩の研究発表を兼ねて、近隣の夫人グループ中心にまことしやかにばら撒いていたものである。
彼はそれでも帽子を被り続け、遂には少年と中年の間を行き来するようになった。おわかりだろうか?腕白で向こう見ずなベースボールキャップを初々しく頭上に戴くこともあれば、くたびれ深い皺の刻まれたベースボールキャップが皮膚の一部であるかのようにはりついている場合もあり、キャップが二面蒼の如くポルカの表情を変えていった。

そんなポルカを理解しようとの村民たちの努力は、一週間ほど西の空を虚しく暮れさせただけで、誰もがみな、もう訳がわからなくなった。
神父だけは訳知り顔で「遠い日の追憶にふけることはノープロブレムである」を村のスローガンに決めた。
彼は相変わらず居心地の悪い中、少年と中年との間を行き来していたが、それはもちろん彼と帽子との関係が少年性に帰結するするでもなく、中年性に着陸するでもなく、その間を行き来していたからである。それでも毎日は東の空から始まった。

サテローナ夫人は、入浴後の紅茶を上品に啜りながら、研究対象たる少年がベースボールキャップをはじめて被った時のことを思い出していた。
彼女は当時、クロスワードパズルを解きながら次の様に思ったのである。
「何だか子供のようで、おっさんのようでもある、不思議な印象ね。人間と帽子とは、中世の頃から特別な関係をもっていたことを考え合わせると、なにかにおうわ。そうね、確かだわ。あの関係には秘密がある」そうして彼女はポルカとその帽子とに注意し出したのである。
そんな当時の思い出を紅茶の中でひとしきりかき混ぜたあと、サテローナ夫人はふと、最初の最初から自分の推理がまったく前に進んでいないことに思い当たった。
「なんてこと。あらまあ。ワタシとしたことが一歩も前へ進んでいないわ。長きに渡って暇を知らなかったこの洞察も、これまでかしら。いいえ、そんな筈はない。でも…、皆目見当がつかないわ…………。もう……、脱帽ね………。」
色とりどりの造花にゴテゴテと飾られ、大きな庇が楕円形にゆったりとひろがる古めかしい婦人帽を慣れない手つきで曖昧に外し、膝の上に置いた。
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# by huck-a-gelmondo | 2004-11-02 20:26

タルトの弁解



なるほど彼女はタルトを好んで食べます。

しかしそれが彼女の夢見るような瞳の輝きを少しでも説明してくれるでしょうか?
ところが浅薄なカレはこう考えました。

「メローチンキ嬢の指にはいつだってこんがりと焼けた小麦粉のかたまりが付着している。すてきにヒョロリと奥びかりする彼女の十の指と、タルトの粉、これはいいアヴェックだ。
お日様の昇る時間にも、お月様の昇る刻にだって、彼女の指先には十六種類あるうちのタルトどれかひとつが抓まれているんだ。そして、そんな性癖を弁解するかのように、両の瞳は、高価な海産物のしかたで潤い光り輝いている…。よし!ボクくらいは彼女を許すんだ!」

カレはそう呟くと、すぐさま街の中心部にあるブリ・エ・ミコラータ目指して駆け出しました。
ひとつの影が、街路樹たちのそわそわと始まる伝言ゲームの中、わき目も振らずもてる力いっぱいで駈け抜けていくのです。

その頃、街に唯一の洋菓子屋さんでは、十七種類目のタルトが出来上がろうとしています。
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# by huck-a-gelmondo | 2004-11-01 13:02

    11月23日(火) 青山 月見ル君想フ(http://www.moonromantic.com)

 『空南』             開場18:30   開演19:00

Happy dispatch(from 湯川音楽事務所)
Itach
JPC BAND(with 来門 from SMOGAS)
etc…(ゲストあり)                                             

前売り \2,000+1D(\500)
当日 \2,500+1D(\500)
   
 *高萩裕司がリードエレクトリックギターとして参加しているバンド、Happy Dispatchとしての出演となります。

**Happy Dispach(はっぴーでぃすぱっち)

Vo,Guitar ヨウスケ(ようすけ)
Vo,Guitar 高萩裕司(たjかはぎ ゆうじ)
Bass ナチ(新婚)
Dums Sunsuke(しゅんすけ)
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# by huck-a-gelmondo | 2004-10-19 21:09

    10月21日(木)
渋谷 青い部屋(http://www.aoiheya.com) 

『サイキック フォークロア』 19:00ヨリ (高萩裕司の出演は20:00ヨリ)

W/ 双葉双一  日比谷カタン 

   ¥2500

          予約は camagro-169@docomo.ne.jp 迄  
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# by huck-a-gelmondo | 2004-09-11 12:43

   9月29日(水)
渋谷 青い部屋(http://www.aoiheya.com)

『Live Salon』19:00ヨリ (高萩裕司の出演は21:00ヨリ)

W/ かみきりむし、ao aqua

前売り/¥2000(1ドリンク含)  当日/¥2500(1ドリンク含)

          予約は camagro-169@docomo.ne.jp 迄
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# by huck-a-gelmondo | 2004-08-24 00:58